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隠匿の令嬢
第16章 灰色の世界



「お帰りなさいませ」


 レオとジョシュアがバルコニーまで来ると、リンゼイはスカートを広げた。


「楽しく過ごせましたか」


「はい、とても。アリエッタ様もみなさんにも良くしていただきました」


 リンゼイに微笑まれ、アリエッタも同じだけ返す。


「それはよかった。ジョシュア。彼女を送ってってくれ」


「え?」


 レオの言葉に反応したのはアリエッタだ。


 皆の視線が集まる。


「ごめんなさい。あの、でも……せっかく帰ってらしたのに」


 てっきりこのあとレオはリンゼイと過ごすのだと思っていた。


「ああ。今晩、伯爵の夜会に同席する予定なんだ。王女も用意があるだろうし、もう王城に戻ったほうがいいからな」


「そうでしたか」


「ええ。アリエッタ様、ありがとうございました。お見送りは結構ですので、ここで失礼はさせていただきますね」


 リンゼイはアリエッタにスカートを広げ腰を落とすと、そのままジョシュアを伴って邸を出ていった。




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