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隠匿の令嬢
第16章 灰色の世界
「アリエッタ」
二人が去るとレオは正面からアリエッタの腰に両手を回し、甘やかな顔をする。
「少し疲れた。昼寝、付き合ってくれ」
「お昼寝……?」
さっきまでリンゼイと過ごし、純粋な彼女の心に触れ、レオの横で眠ることに罪悪感が胸に刺さる。
一刻も早くレオへの思いを断ち切らねばと思った直後だ。ただ眠るだけでも、赦されないように思えてならない。
「レオ。あのね、あの……」
レオに婚約のことを訊いてみようか。真実ならば祝福し、この爛れた関係をも断ち切ろう。
これまでも幾度か口にしようとし、その度に喉がキュッと締め付けられ、鼻の奥が痛くなり、泣き出してしまいそうになる。
今日こそ。今日こそは。
何度決心を固めようとしただろう。
だが弱い己に負けてしまう。
「どうかしたか?」
「あ……いいえ、なんでもないの。お昼寝、付き合うわ」
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