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隠匿の令嬢
第16章 灰色の世界
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アリエッタは王都国立学校の敷地を、空いた時間に回っていた。
年度の終わりを告げようとするこの頃。学生たちの姿もまばらで、前期長期休暇前よりも如実だ。
舞踏会シーズンの訪れも相俟って、残り僅かとなる学生生活における学業よりも新しい装いをしつらえることに専念する学生も多い。
静かな敷地はゆっくりと見て回るには最適で、世話になった寄宿舎の寮母にも挨拶をしたり、礼拝堂にも赴いた。
この機会に他も足を運んでみたりもした。
敷地内にある演劇場──夜、劇団を招いてオペラが催されたり、楽団による演奏を聴けたりする場所であるが、その立派な建物も外側から眺めたりもした。
厩舎には素晴らしい毛並みの馬が何頭も飼育され、急な送迎にも対応できるようになっていた。
そして、アリエッタはこの日最後にあの温室へと行くことにした。
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