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隠匿の令嬢
第16章 灰色の世界




 太陽の光を一身に浴び、丸みを帯びる天井は相変わらず煌めいている。モスグリーンの枠は錆もなく、貼られるガラスは誰かが毎日磨いているのか曇りはない。


 中に茂る緑豊かな草花は艶やかで瑞々しく、アリエッタが通っていた頃とはまた別の花も外から見受けられた。


 色彩が失われた今でも懐かしさから草花に心が洗われるようだ。


 鍵があれば入ってみたい。だがアッシュブラン邸に住んで以降、ここには訪れておらず、もちろん鍵も返却していた。


 アリエッタは期待していたわけではないが何気なく取っ手を捻ってみた。懐かしい感触に触れてみたかったのだ。


 すると、どういうわけか鍵がかかっていない。


 管理している庭師が植物の世話にでも来ているのだろうか。


 それとももしや──。


 アリエッタは逡巡したのち、そっと中へと踏み込んだ。







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