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隠匿の令嬢
第16章 灰色の世界



 リンゼイが最初にアッシュブラン邸に訪れたとき、そして再び来ると聞いたとき。


 鉛が落ち重たい気分になったのは、居場所が無くなる気がしたから。


 温室もそうだ。


 アリエッタが大切に思い出として仕舞っておいた場所に彼女とレオがいて、その思い出ごと奪われた気がした。


 子供じみたくだらない独占欲だ。


 アリエッタの場所など初めからないというのに。


 レオとリンゼイの間に割り込んでいるのはアリエッタだ。


 先ほどの彼女の涙は、もしかするとどこからかアリエッタとレオのただれた関係を聞き及んでしまったのだろうか。


 それとも本当の家族でもなく使用人でもないアリエッタがレオの邸に住み、アリエッタにもあったようリンゼイも女の勘を働かせ、深憂してるのかもしれない。


 もう一刻の猶予もないように思えた。


 レオとリンゼイを引き裂く前に、邸から出なければ。


 アリエッタは幹に爪を立てつつ拳を握り締めた。






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