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隠匿の令嬢
第17章 隠匿の決断



 イーゼルを前にエプロン姿のアリエッタは瞼を閉じて椅子に座っている。


 規則的な深呼吸で落ち着く匂いを吸い込み、眼裏に思い浮かぶレオの色彩を呼び戻す。


 鮮烈な彼の色は衝撃的であった。


 他を圧倒し、寄せ付けない彼の色。アリエッタの数少ない知り合いの誰よりも強烈で。それでいて包み込まれるような温かさがあって。


 あらゆる色が混在しているのに、見事に調和し。相反する色調も溶け合い、諧調していた。


 美しく艶やかな彼の色を思い浮かべると、胸が焦がれる。もうアリエッタに見えないのが哀しくて仕方ない。けれど形に残し、彼には見せてあげられる。






 アリエッタはそっと瞼を開き、灰色の世界に戻る。


 でも、それでも。描き上げると決めたから。


 アリエッタは油絵の具の容器が置かれるテーブルに眼を向け、ひとつひとつを撫でた。






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