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隠匿の令嬢
第17章 隠匿の決断



 アリエッタは几帳面な性格で絵の具の配置は常に一定だ。


 筆を入れるべき箇所も覚えている。


(迷っちゃ駄目。必ず出来るわ)


 自らを叱咤し、絵の具を選ぶ。それを容器からパレットに移し、混ぜる。


 経験からどの色をどれだけ混ぜればどんな色を出せるか、見えずとも手に取るように解る。


 ふぅっと息を吐き、筆に作り出した絵の具を乗せる。


 こくりと生唾を呑み込み、描きかけのキャンバスへと慎重に筆を運んだ。


 アリエッタは周りの景色が眼に入らないほど集中し、一筆一筆丁寧に、心を込めて塗っていく。


 レオへの感謝を、彼への想いを。


 ──幸せを願う気持ちを。


 知らずと流れる涙には自身も気づいてない。


 ぽろぽろと零れる涙の分だけ仕上がりが近付き。


 そして──。






「出来た……」


 完成したその絵を一瞬だけ眼に留め、アリエッタは声もなく涙を零し、肩を震わせた。






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