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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る
そんなことがあってから、レオは口調を砕いて話すようになった。だからといって急速に距離を縮めたわけじゃない。
この日から時おりレオもお菓子を持参するようになり、デッサンの手を止めてまでお茶を勧めてきた。
「あまり食べると夕飯が入らなくなるので……」
と、最初のときにやんわりと退けた。ここの鍵を貸してもらうだけでキスという対価を要求されたのに、お菓子なんて食べたらどんな要求をされるか……。
それにアリエッタは他人の親切を無償で受けるのも気に病んだ。アリエッタにはこんなことしてもらう価値がないのだから。
「セドのは食べたのに俺のは食べられない?」
「あ、あれは……! セドリック様がお作りになったと言って……」
『あたしみたいな男が作ったものは食べたくないのね』と、哀しげに瞳を伏せたから渋々だ。
しかし口に入れてみると、驚くほど美味しくて。本当にセドリックが作ったのかと疑ったほど。
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