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隠匿の令嬢
第17章 隠匿の決断
別れを惜しむような長く甘い口づけ。
アリエッタの瞼がふるりと震える。
(まだよ、まだ……。最後まで笑顔で……)
アリエッタはなにかに耐えるよう、レオの上着をキュッと握る。
口づけもこれが最後。口腔をなぞる舌の熱さや唇の柔らかさを、アリエッタはしっかりと刻み付ける。
名残惜しそうに離れた舌先で、濡れる唇を舐めらる。
「なにかあればすぐうちの者に連絡しろ。いいな」
「なにもないわ。心配し過ぎよ。気を付けて行ってきてね。それから王女さまによろしくお伝えして」
「ああ。じゃあ行ってくる」
レオは再び力強くアリエッタを抱き締め、馬車に乗り込む。カーテンを開き、中からアリエッタを見詰めていた。
アリエッタも馭者が馬を繰り、馬車が見えなくなるまでそこに佇む。追いかけたいと足が動きそうになるのを、必死で堪えて。
──さようなら、レオ。どうかお元気で。
そう心の中で呟きながら。
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