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隠匿の令嬢
第17章 隠匿の決断
食事中、アリエッタが覚えている限りでは父の話すことの大半は、仕事先で出逢った人や周囲の貴族たちの話。
それも自分よりいかに劣っているかに尽きる。
誰それの仕事ぶりは全くなってないとか、あんな奴が爵位を継いでいるのが嘆かわしいなど。
母もリリスも馴れていて、上手に父を持ち上げている。
馴れていないアリエッタは曖昧に頷くことしか出来ない。
一通り父の愚痴とも言える日常の出来事を話し終えると、彼はアリエッタに話を振ってきた。
「アリエッタ。その後殿下とはどうなんだね」
「きた」と思った。まさにアリエッタが待っていた話題だった。
「友人がね。殿下とカンターヌの王女が学校で婚約が囁かれているというんだよ。私はそいつに言ってやったよ。馬鹿馬鹿しいってね。殿下は私の娘といい仲なんだからって」
そんなことを父が吹聴しているとは。いや、この父なら充分考えられる。
父は自分の権力を強めるため、アリエッタだけでなくレオをも利用することを厭わない人だ。
だがそれはアリエッタには赦しがたい行為だ。
レオの幸せを……たとえ実の父であっても壊させるわけにいかない。
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