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隠匿の令嬢
第17章 隠匿の決断



 椅子を倒す勢いで立ち上がった父は、つかつかとアリエッタの真横に立ち。そして大きく振り上げた腕を一気に振り抜いた。


 ──パァァン


 乾いた音に続いて受けた衝撃でアリエッタの身体は床へと投げ出される。


「アリエッタ!」
「お姉さま!」


 波打つ蜂蜜色の髪を乱して床に臥せるアリエッタの元に母とリリスが駆け寄る。


 頬が燃えるように痛く、床に打ち付けた箇所がズキズキとした。


「よくも……よくもこの私の顔に泥を塗る真似が出来たものだな! この恥知らずめが!!」


 父はアリエッタをぶって尚も怒りが冷めやらないようで、アリエッタに掴みかかろうとする。だがそれを母が両腕を広げて阻止する。


「あなた! 止めてください!」


「お前は退いていろ!」


「お願いですから落ち着いてください! これにはなにか事情が……」


「事情だと!? お前も聞いていただろう! こやつは己の私利のために殿下を利用し、私を謀ったのだぞ!」






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