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隠匿の令嬢
第17章 隠匿の決断



 父の怒声と母の悲鳴が響くなか、アリエッタは痛む頬を押さえもせずにゆるゆると顔を上げる。


「なんだその眼は……!? 大体昔から気に食わなかったんだ! それなのにここまで育ててやった恩を仇で返すとは!!」


 父の言葉に頬よりも胸が痛む。


「やっぱりお父さまは……」


 アリエッタは誰にも届かないような小さな声で呟く。


「お前のような恥知らずな娘の顔など見たくもないわ! 出ていけ! 今すぐここから出ていけ!!」


 父の詰る言葉が心に刺さる。


 アリエッタはこうなることを予想していた。


 レオの求愛が嘘と解り、アリエッタに利用価値が無くなれば父に見向きもされないだろうことを。


 だがこれでレオがアリエッタを捨てたなどと父も思わないだろう。事実捨てられたわけではない。


 そしてレオはなんの障害もなくリンゼイと結ばれ、父の誤解が解けたと確信が持てればアリエッタも心置きなく邸を出られる。


 その目的を果たすために出た、アリエッタの一世一代の演技だった。





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