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隠匿の令嬢
第17章 隠匿の決断
アリエッタはよろよろと立ち上がる。
父がアリエッタを愛していないと、とうの昔から気づいていた。けれど彼の言う通り、ここまで育ててもらった恩を仇で返してしまったのだ。
アリエッタに償う術などない。なにも持ち合わせていないのだから。
「今までお世話になりました。もう二度とお父さまの前に姿を見せたりは致しません。申し訳……ありませんでした」
アリエッタは床に平行になるほどに頭を下げ、踵を返した。
「アリエッタ! 駄目よ! 行っては駄目!」
「お母さま……。申し訳ありません。親不孝なことばかりして、本当に申し訳ありません」
「アリエッタ……」
涙を浮かべる母を振り切ろうとすれば、リリスが腕にしがみついてきた。
「いやよ……! お姉さま、行かないで!」
「リリス……。不甲斐ない姉でごめんなさい。ライアンと仲良くね」
アリエッタはリリスの手をそっと剥がす。母とリリスの制止の声を背に受けながら、アリエッタはダイニングを飛び出した。
そして。ザキファス邸から出たアリエッタは忽然と姿を消した。
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