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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る
「いいお話じゃない! 受けるべきよ! 教授だって色好い返事を期待してるっておっしゃったんでしょ? ならそうしなさい」
アトリエをあとにしたアリエッタは別の講義を受けていたニーナの元へ行き講義が終わるのを待って、個展の話を相談した。
希望と躊躇の間で気持ちがせめぎあい、一人では決められそうになかったからだ。
「うん、でも私なんかの絵でいいのかしら?」
「当たり前じゃない! いいから教授はお誘いしてくれたのよ?」
「それだけじゃないの。ニーナだって知ってるでしょ? 私の絵が世にでれば困る方だっているわ。与えられた自由の範疇だって超えてるもの……」
「もう、またそんなこと言って……。いい? あれはアリエッタのせいじゃない! それなのにこんな扱い不当だわ! わが家にもっと力があれば、アリエッタを救えたのに悔しいわ」
自分のことのように怒ってくれるニーナがいるから救われる。どれだけ感謝してもしつくせない。
恵まれた環境とは言えない生活で、ニーナがいてくれるだけ恵まれてる。アリエッタは憤慨するニーナに心で感謝の言葉を贈った。
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