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隠匿の令嬢
第18章 王太子の過去
「お、おいカーラ。苦しいってば!」
「いいじゃないですか! カーラは嬉しくて堪りません!」
ぎゅうぎゅうと抱き締められると、擽ったいような気恥ずかしさが込み上げてくる。
だから腕から逃れ、冗談を付け加える。
「カーラに貰い手がなくても安心していいぞ。ヨボヨボのばあさんになっても、俺が面倒をみて楽をさせてやるから」
年頃になっても恋人がいないと前に他の使用人から茶化されていたのを思い出したのだ。
「も、もうっ! 不吉なことを言わないでください。本当になったらどうしてくれるんですか!」
膨れっ面になってもカーラはやはり嬉しそう。余程レオに面と向かって好きだと言われたのが心を浮き足立たせていたようだ。
レオはそんなカーラに白い歯を見せ笑ったし、カーラも声を立てて笑った。
まさかこの会話が最後になるとも知らずに──。
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