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隠匿の令嬢
第18章 王太子の過去



 それはカーラが見舞いを終え、王城へと戻る途中の出来事であった。


 歩いていたカーラを暴走した馬が、突如として襲ったのだ。


 それを見ていた者によると、馬は興奮し、カーラはなす術もなく蹴られ。


 馬を落ち着かせたときにはもうカーラは虫の息であったそうだ。


 彼女の荷物に王室付きの侍女である証明書があり、城に報せが届いたときには息を引き取ったあとであった。


 彼女は息を引き取るその間際まで、うわ言でレオの名を呼び続けていたらしい。


 彼女の亡骸と対面したレオはただただ茫然とした。


 自分が王になる未来よりももっと、カーラが二度と眼を醒まさない現実のほうが実感がない。


 あちこち傷だらけである彼女を眺めても、また起き上がってレオを叱りつけ、そして遊びに誘い、レオを大好きだと言ってくれそうで。


 胸の上で重ねられる手に触れたとき、その冷たさに震えが起きた。





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