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隠匿の令嬢
第18章 王太子の過去
「おい、カーラ。いつまで寝てるんだ?」
震える声で呼び掛ける。カーラは反応を示さない。
「たっぷり寝たら、勉強するんだろ? 遊ぶんだろ?」
カーラが言ったじゃないか。なのに自分は守らないのか。
「また魚釣りに行こうって、虫を捕りにも行こうって……!」
笑ってたじゃないか。約束したじゃないか。
そう言って詰っても責めても、カーラは眼を開けることはない。
泣きじゃくるレオを母がきつく抱き締めてくる。
生きている体温が母にはあった。
それは横たわるカーラにないもので、いっそう震えが起こった。
このカーラとの突然の別れはレオに大きな傷を残したが、彼女の遺したものはそれだけでなく。
口癖になっていた教えはしかと心に刻まれ、レオは常に頭に置くことになる。
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