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隠匿の令嬢
第18章 王太子の過去
シンシアが作る指輪を嵌める役はいつもレオ。
手渡されたレオは苦笑を浮かべ、シンシアの手を取った。
「はいはい、お姫様。では私がお付けしましょう」
シンシアが差し伸べる左手を取り、白くて細い手の薬指にするすると嵌めていく。
これは遊びで真似事だ。特別な意味はない。
けれどシンシアは頬を赤らめる。レオはその様子にもこっそりと苦笑いをした。
レオとセドリックは二人でチェス盤を挟み、負けたら相手の顔にインクで落書きをするという遊びをしていたとき。
すでにセドリックの顔には他人には見せられないような落書きが多く施されていた。
一方レオは汚れひとつない。
ことチェスに於いてレオはセドリックに滅法強く、負け知らずだ。
「ほら、早くしろ。いつまで考えてるんだ?」
「煩い。考えてるんだから静かにしてよ」
間抜けな顔で真剣な表情のセドリックは滑稽だ。笑いを堪えて肘掛けに凭れていれば、セドリックがふと顔を上げる。
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