この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
隠匿の令嬢
第18章 王太子の過去
すかさずレオも駒を動かす。
「わかってるならいちいち口に出すな」
シンシアとて子供の淡い恋心だ。真剣にレオを好きだとか、恋人になりたいとかまでは考えていないだろう。
「でも。もしもよ? 王さまと伯爵があんたたちを結婚させるって言い出したらどーするのよ」
「それはない」
レオは確信を持って言い切る。それを不思議そうに聞いているセドリックに理由を告げる。
「結婚相手は自分で決めると父上には言ってある。政略や親の都合で決められたくはないからな」
王太子として生まれたレオの人生は、国王となることが生まれ落ちたその瞬間から決められている。
逃れられない宿命だ。
王になるのが嫌なわけではない。簡単な執務でさえもやり甲斐は感じている。
けれど生涯の伴侶まで誰かに決められるのは嫌だ。
レオもまだ誰かを本気で愛した経験などないが、恋愛をして結婚した両親の姿を見てきたレオには、それがいかに幸福なことだというのは解るつもりだった。
.