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隠匿の令嬢
第18章 王太子の過去
「シンシア。必ずお前の病気を治せる医師を探してやるから、諦めるな。いいな」
レオは見舞うたびにシンシアを力付ける言葉をかけ続けた。
毎回、毎回同じような台詞を吐かざるを得ないことに苦しみながら。
「レオ兄さま……。私、頑張るわ」
寝台で横たわるシンシアは弱々しく笑いかけてくる。彼女の手を握ってみても、握り返す力がないのが辛い。
「ねえ、レオ兄さま……。お願いがあるの」
「なんだ? 言ってみろ。俺に出来ることなら全部やってやるから」
口先だけでなく、本気でそう思った。
レオに出来得るすべてをしてあげたい。
食欲がないシンシアのためなら、なにか食べたいものがあれば遠くでしか手に入らないものでも取りに行くし、花が好きな彼女のためなら部屋中埋めつくしてもいい。
けれど彼女の願いは……。
「あのね。一度でいいの。私のこと……好きって言って欲しい」
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