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隠匿の令嬢
第18章 王太子の過去



 レオは驚いて、言葉に詰まる。


「レオ兄さまが私のこと妹としてしか見てないの知ってる。でも……言ってもらえたら、もっと頑張れるから」


 シンシアは哀しげに、けれどかさつく唇を持ち上げる。


「シンシア……」


 レオはそんな彼女の髪を撫でる。自分の言葉で元気付けられ、生きる気力が持てるならば……。


「……好きだ。何度でも言ってやるから、病気なんかに負けるんじゃない」


「レオ兄さま……。ありがとう」


 微笑むシンシアを眠りにつくまでレオは頭を撫で続けた。


 きっと助かると信じて。










 その翌朝。


 シンシアの急変の報せが王城に届いた。


 駆け付けたレオや両親、そしてセドリックや彼女の家族に見守られ、シンシアは静かに息を引き取った。


 一度も言葉を交わせぬまま。


 眠るよう、苦しまずに逝けたのはシンシアにとっては幸いであったのかもしれない。


 だが残された者たちの哀しみは深く、嗚咽は止むことはなかった。






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