この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
隠匿の令嬢
第18章 王太子の過去
しかしレオの本当の苦しみは、ここからであった。
シンシアの葬儀の帰り、レオとセドリックは馬車には乗らず歩いていた。互いに歩きたい気分だったからだ。
このときすでに側近として働いていたジョシュアと、セドリックの執事も連れだってではあるが。
「俺はもう神は信じない。居たらシンシアが死ぬはずない」
「あたしもよ。……ねえ、レオ。シンシアが息を引き取る前日邸に行ったのよね? なに話した?」
セドリックが何気無い質問。多分、シンシアの思い出話を語りたいのだろう。
だがこの質問がレオを地獄へと突き落とす。
「シンシアとあの日……」
言いかけたところ、不意に幼い頃のことが甦った。
思い出したのはカーラのことだった。
確かカーラが死ぬ前日、レオは彼女にも「好き」と言った。
そしてシンシアにも──。
なぜこんなことを……ようやく癒えかけたカーラの死を思い出したのか。
死に直面したからであろうが、そんなことを考える余裕はなかった。
.