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隠匿の令嬢
第19章 再起のとき
「ようこそお越しくださいました」
邸の家令だろうか、老齢の紳士の挨拶に後ろに控える使用人たちが父とレオに頭を下げて出迎えた。
簡単な挨拶ののち、家令に先導されて通された部屋はこの邸の主のもの。
部屋の様相は重厚で、一面の壁には暖炉が据えられ、調度も品のいい物が揃えられている。
だがレオはそれらに眼もくれず、飾られている1枚の絵に惹かれるように視線を留めた。
それは老人の肖像画であった。
厳しい面差しではあるのに温かみがあり、優しい色使いが作者の心を表しているようだ。
拙い絵。しかしなんとも表現し難い深みがある。
心を奪われる、というものがあればまさにそれだった。
「レオ? どうしたのだ? 彼はこちらだ。早く来なさい」
食い入るように見詰めていれば、父に促される。
「あ……、はい」
レオは後ろ髪引かれる思いで家令と父に続いた。
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