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隠匿の令嬢
第19章 再起のとき


「旦那さま。王さまがおみえになられました」


「……うむ。入っていただきなさい」


 しわがれた声が寝室から返ってくる。


 寝室に入ると、肖像画の人物が寝台で上体を起こしている。


「王の御前でみっともない姿を晒す無礼、お許しください」


「とんでもない。お加減はいかがですか──ザキファス公爵」




 そう、彼は前ザキファス公爵──アリエッタの祖父であった。



 公爵のことは父から話に聞かされてはいたが、面識というほどの面識はなく、二度、三度挨拶を交わした程度。


 父は祖父と公爵の交流があったことから、幼少の砌より彼とは食事や狩りにも出掛けた経験があるそうだ。


「王太子殿下。ご立派になられましたな」


「ありがとうございます」


 記憶にある公爵よりも目の前にいる彼は丸みを帯びた雰囲気になっていた。


 漆黒の双眸もこんなふうに細められただろうか。


 もっと厳しい印象があり、実のところここに来るまで緊張していたが、公爵の笑みに緊張が多少和らいだ。






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