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隠匿の令嬢
第19章 再起のとき
公爵邸に来ては絵を眺める日々。
自分でも気が狂〈フ〉れたのではと思うほどだ。
美女や風景画ならばともかく、なにが愉しくて老人の絵などを時間が許す限り眺めているのだろうか。
だがこの絵を眺めていると、胸の内にあるジクジクと刺し続けていた棘が抜け落ちていく。
それは日を追う毎に如実となり、抜けるだけでなく塗り薬を塗られ血を流していたそこがじんわりと癒されていく──そんな不思議な感覚。
この絵を眺めた日はどうしてか発作は起きない。
ザキファス邸に来れない日も、眺めているうち徐々に発作が治まってきていた。
「またご覧になられてたのですか」
公爵が杖をついて起き上がり、レオの背後から声をかけてきた。
「起きられて平気なんですか?」
「今日は気分がいいんですよ」
「そうですか」
レオは公爵を支えて彼専用の揺り椅子に座るのを助けた。
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