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隠匿の令嬢
第19章 再起のとき



 公爵は体調のいい日もあれば、優れない日もある。レオは邸に来ていても体調に合わせて彼と話したり話さなかったりだ。


 絵だけを眺めて帰る日も珍しくない。


 最初のころは公爵にあまり迷惑をかけるのも……と思ってはいたが、彼はレオの心の内にある傷を見透かしてか、好きにしていいと言ってくれた。


「物好き……と思われますでしょう」


 公爵が揺り椅子に座ってからも眺める自分を自嘲する。


 誰だっておかしいと感じるだろう行動。決して暇ではない立場であるのに、1枚の絵を見るためだけに馬車に乗り通っているのだ。


「いいえ。私も殿下のお気持ち、よくわかります。この絵には人を癒す力がある」


 公爵の双眸が優しく細められ、目許の皺が深くなった。


「はい」


 絵はとても優しいのに、なんだか無性に泣きたくなるような。それは哀しいものではなく、嬉しいときに泣きたくなる気持ちに似ていた。





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