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隠匿の令嬢
第19章 再起のとき
「……殿下。ある愚かな男の話を聞いてくださいませんか」
唐突に公爵から切り出され、困惑を浮かべるが、レオは黙って頷く。
公爵はそれを認めてから、視線を絵にやり話し出す。
「男には妻との間にひとり娘がおりました」
そう話し出す公爵。レオは時おり公爵の横顔を見詰めては聞き入った。
男には蝶よ花よとそれはそれは大事に育ててきた娘がいたそうだ。親の愛情を一身に受け、成長した彼女は誰もが眼を見張るほど美しい女性となった。
男はいずれ娘に見合う結婚相手を見付け、彼女が生涯幸せであるようにと願っていた。
だが娘はある日、見知らぬ男を連れてきた。彼と結婚を考えている、と男に紹介をしたのだ。
当然反対をした。なぜならば男は高い爵位を持ち、娘の連れてきた男は下級貴族の出だ。到底娘と釣り合うとは思えない。
理由はそれだけでなく、彼の眼にほの暗いものを男は見た。
この男は娘を愛しているのではない。娘の父親の地位が欲しいのだ──そう感じた男は断固として結婚に頷かなかった。
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