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隠匿の令嬢
第19章 再起のとき
男は娘の結婚相手を探すのに躍起になった。先に結婚させてしまえば、どこの誰とも解らぬ相手を忘れるだろうと。
その目論みは娘の妊娠であっさりと砕かれた。
今よりも男女の間に厳しい時代。処女を失ったばかりか妊娠までしているとなれば、他の男に嫁ぐのは難しい。
男がいつまでも反対をしていても娘の腹は大きくなるだけ。娘の腹が目立ってから式をあげようものなら、いい笑い者になってしまう。かといって堕胎は大罪だ。
男は泣く泣く娘の結婚を承諾した。娘が不幸になるのは火を見るよりも明らかなのに、だ。
男は娘を傷物にした彼を大層恨んだ。
顔を合わせれば彼を詰り、矜持を砕く言葉を幾度となく投げた。手を上げたこともあった。
彼の瞳に只ならぬ炎が燃えていたが、男のほうが彼よりも怒りと恨みに燃え、見て見ぬふりを続け。
彼の矜持を砕き続けた。
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