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隠匿の令嬢
第19章 再起のとき
やがて娘の宿した子供が生まれた。可愛い女の子だった。
黒い瞳の、少しくせのある蜂蜜色の髪をした女の子はアリエッタと名付けられた。
娘を孕ませた男のことは赦せない。その彼の娘だと思うと複雑だった。
しかしいざアリエッタと対面し、抱いてみると可愛くて仕方がない。それもそのはずだ。大事な大事な娘の子供だ。可愛くないはずはない。
けれど男は孫が生まれてからも彼のことだけは赦せず、辛く当たるのをやめられなかった。
アリエッタのあとにもうひとりリリスと名付けられた娘が生まれた。
男の予想に反し、2人の娘に囲まれた男の娘は幸せそうだった。
そこまで語った公爵は口を閉ざし、ふと自らの肖像画を見上げる。物憂げな横顔だ。
「この絵は……孫が……アリエッタが描いてくれたものです」
公爵の言う“愚かな男”。語る話も公爵自身のことではと、レオは感じていた。
だが解せなかった。
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