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隠匿の令嬢
第19章 再起のとき
公爵はまた語る。アリエッタがリリスに怪我を負わせたあらましを。
アリエッタがリリスを厨房に連れて行き、煮えたぎる湯をヤカンごとひっくり返し火傷をさせてしまったのだと。
「あの男はリリスを可愛がっておりました。そのリリスを傷付けたアリエッタを赦せなかったのでしょう。アリエッタを娘と認めなくなり、使用人のように扱い……アリエッタから絵を描く以外の自由をすべて奪ったのだ」
「どうして……? 妹に怪我をさせたのは、わざとではないのですよね? それに公爵もなぜ彼女の現状を知ってて助けて差し上げないんですか?」
レオには理解し難かった。いくら可愛い娘が怪我をさせられても、それをやったのもまた可愛い娘だ。アリエッタだって傷付いているはずなのに。
虐げ、使用人として扱うなどもってのほかだ。
「お若い殿下にはわからぬでしょうな」
皺が深くて弱った老人が、その言葉により小さくなった気がした。
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