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隠匿の令嬢
第19章 再起のとき



 さめざめと泣く公爵にかける言葉が見付からない。


 レオのような子供の言葉が届くとも思えない。慰めも無意味な気がした。


 レオは黙って公爵の隣で座り、アリエッタの絵を眺めていた。


 やがて公爵は泣き止む。


「……なぜ私が今になって殿下にお話したか不思議に思われておりますでしょうな」


 レオは逡巡してから頷く。彼の懺悔を聞くだけの相手にしてはレオは若すぎる。交流も一ヶ月と短い。


「殿下はこの絵になにか感じておられるのですよね? 気に入ってもおられる。違いますか」


 レオはまた逡巡し、頷いた。この気持ちをどう表現していいものか……。


 素晴らしい絵はたくさん見てきた。国に名を馳せる画家の絵も。しかしアリエッタという娘が描いた絵ほど感動し、心囚われる絵はかつてなかった。


「殿下。ひとつお願いがあります」


 公爵は懐から封筒を取り出した。


「これを預かっていただけないでしょうか」








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