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隠匿の令嬢
第19章 再起のとき



「これは?」


 公爵から封筒を受け取る。裏にはザキファスの蝋封が施されていた。


「アリエッタは才能溢れる子です。手助けは出来ずとも、せめて学校へは通わせてやりたい。あの子が好きな絵を目一杯描かせてやりたい。国立学校には私の古い友人……宮廷画家を務めたギルデロイという男が教鞭をとっております。彼ならアリエッタの才能を見抜き、良き理解者となることでしょう」


「ギルデロイなら私も知っております。ではこれは彼への紹介状……ですか」


「いいや、違います。アリエッタならば才能のみでギルデロイに眼をかけてもらえるはず。これは私の遺言状……アリエッタを学校へ通わせることと書き記してあります」


 レオは公爵と手渡された遺言状を交互に見る。


 彼の双眸には強い意志が宿っている。それは危機感さえ覚えさせるものだった。


「そんなにお悪いのですか……?」


「いえ……。今すぐどうこうということはありません。ですが万一私になにかあってもいいように、殿下にこれを託したい。お願い出来ませんでしょうか」





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