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隠匿の令嬢
第19章 再起のとき
レオに公爵が遺言状を渡すということは、他に託せる者がいないということだ。
それはつまり邸の中にアリエッタの父親の手の者がいるかもしれず、遺言状を置いておけば握り潰される可能性があるということなのだ。
「……わかりました。これはお預かりし、公爵の身になにかあった場合は開封し、手続きが踏めるよう手配いたします」
「ありがとうございます……」
「代わりと言うわけではありませんが、私もお願いしたいことがあります」
「なんでしょうか」
「一度彼女に逢わせてもらえませんか」
「孫に、ですか」
「はい」
純粋に興味があった。この絵を描いた作者に。
アリエッタの境遇を考えれば、こうまで温かみのある絵を描けるなど信じられない。
心は荒みきり、境遇に悲観し、冷たい画風になってもよさそうなものなのに。
絵に限らず芸術はその人の心を表すものだから。
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