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隠匿の令嬢
第19章 再起のとき
顔を晒したアリエッタにレオは驚いた。
可愛い顔立ちなのはもちろんだが、驚いたのはそこではない。
憂いを帯びた漆黒の双眸ではあったが、曇りがなかった。公爵を見る眼差しは優しく、澄みきっていて。
にこりと微笑む彼女の笑顔に嘘が見られなかった。
なぜ笑っていられるのか不思議でならない。
公爵の話は作り話だとさえ思ってしまう。
公爵がアリエッタの手を取る。
「こんなに荒れてしまって……。辛くはないかい?」
アリエッタは僅かに困ったような顔をしたあと首を横に振り、また満面の笑みを浮かべた。
「いいえ、おじいさま。私、働くことは好きです。ダンスのレッスンよりも性にあってるみたいなの。だから心配なさらないで?」
アリエッタの言葉にぐっと胸が詰まった。
そして彼女の強さに自分を恥じ入った。
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