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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る



「アリエッタ。座らないのか?」


 ポットを手にしたまま立ち尽くしていると、レオは怪訝そうな視線を投げた。


 アリエッタはポットをテーブルに置くと逡巡したのち、身体の前に据えた手でギュッとドレスを握った。


「お願いがございます」


 緊張で心臓は騒ぎ立てる。それでも決心が鈍るまえに告げたいと、必死でその場に居続ける。


 アリエッタとレオが出逢ってから頼みを口にするのは初めて。レオはカップを受け皿に置くと、聞く体勢をとる。


「なんだ? 俺で出来ることがあるなら協力する」


「絵の……絵のモデルになっていただけないでしょうか?」


 レオは僅かに眼を見開く。


「お礼になんでも致します。……触れられること以外は、ですが」


 アリエッタは先手を打って付け加える。


 レオは苦笑すると


「本当になんでもいいんだな? 触れること以外は」


 反芻してアリエッタを見上げた。


「はい」


 真っ直ぐ見据え、迷いなく答えた。







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