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隠匿の令嬢
第19章 再起のとき



 せっかくアリエッタと逢え話せたのに、嫌われてしまっては元も子もない。なのに衝動を抑えられなかった。


 後悔してから、今度は笑いが洩れた。


 触れてみてようやく自分の気持ちに気が付いた。


 どうして彼女に逢いたいと思い、話したかったのか。伯爵に嫁ぐと聞いて肝を冷やしたのか。


 絵でレオを癒し、図らずも助けた彼女をレオも助けたかった。彼女の境遇にも同情はした。


 だがそんなもの、言い訳に過ぎなかった。


 どれだけ言い訳を並べ立てても、抑えられなかった衝動がすべてを物語っていた。戯れに女を抱くことはあっても、あんな衝動に駆られたのは初めてで。


 とっくにアリエッタに恋をしていたのだ。多分アリエッタを眼にしたその瞬間から。


 彼女が纏う澄んだ空気感も、淑やかな雰囲気も、おどおどとするところさえも新鮮で。


 いつの日か祖父に向けられた笑みを自分に向けさせたくなった。







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