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隠匿の令嬢
第20章 アリエッタの愛



 次々と思い出すアリエッタの姿と言動。


 レオの前で涙を見せたのは一度きり。


 ずっと恐怖と哀しみに耐えてきた。あの細い身体で。アリエッタを救いたいと思ったあの日と同じように。


 レオが一言、想い人はアリエッタだと伝えていれば、哀しみに暮れる日々を過ごさせはしなかった。愛していると言ってさえいれば……。


 くだらない妄想に囚われ、言えばアリエッタが死んでしまうかもと恐れ。


 失いたくなかった。だから言えなかった。しかし結局はレオの愚かな妄執がアリエッタを失うことに繋がってしまった。


 アリエッタはひたむきにレオを想い、幸せを願ってひたすら耐え。レオとリンゼイの邪魔になるだろう自分がいなくなることで、二人の幸せを守り。


 ──だが俺は……?


 彼女と正面から向き合いもせず、しがらみから解放さえすればなんの問題もなくこの幸せが永遠に続くと思い。


 言葉にせずとも互いの気持ちが通じ合うと思い込み。どうして通じると思ったのだろうか。アリエッタは愛を知らずに生きてきたのに。誰かに愛されるなどと考えたことすらないはずなのに。


 レオの愛は浅はかで、独りよがりな愛だったのだ。






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