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隠匿の令嬢
第20章 アリエッタの愛



 レオはアトリエから出ると、その足で玄関ホールに行く。


 待ち構えていたよう、集まる使用人たちは皆泣き濡れた顔をしている。


 レオは一言も発せず邸から出ていこうとすれば、ジョシュアが立ち塞がった。


「……退け」


 低く唸るも、ジョシュアはぴくりとも動かない。


「いいえ、退きません。レオナルド様、どちらに行かれるつもりですか」


「アリエッタを探しに行くに決まってるだろう。いいから退け! 退かぬなら、お前とて容赦はせんぞ!」


 テコでも動こうとしないジョシュアに向け、携えていた剣を引き抜いて切っ先を向ける。


 ハッと息を呑む気配がどこそこでし、しかしジョシュアは怯む様子もなく真っ直ぐレオを見据えている。


「どうぞ、お斬りください。私の身ひとつでレオナルド様をお止め出来るのでしたら本望です」


 ジョシュアは冗談など言う男ではない。これは本心だ。


 解るからこそ怯んだのはレオだった。



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