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隠匿の令嬢
第20章 アリエッタの愛
レオは剣を下げると空いた手で拳を作り、ジョシュアの肩口を叩く。
「……頼む、行かせてくれ。今もどこかでアリエッタは独りで震え、泣いているんだ。放っておけるわけないだろう」
ぐっと握り締めた拳を肩口に押し付ける。
「レオナルド様……。その頼みだけは聞くわけに参りません」
「なぜ……なぜだ!?」
「あなたはご自分の立場をまるでわかっておられません。周りも見えてはおられません。この広い国中をおひとりで探されるおつもりですか?」
「立場など……。アリエッタひとり守れず、なにが王太子だ!! そんなものに縛られ、アリエッタを探しに行けぬというなら、欲しい奴にくれてやる!」
「……それをアリエッタ様が望まれるとでも?」
レオの叫びを打ち消すよう、ジョシュアの静かな声が響く。レオは言葉に詰まった。
「レオナルド様が立場を放棄し、アリエッタ様をお探しに行かれれば、あなたはそれで満足でしょう。ですがそれをアリエッタ様がお知りになられたら、深く苦しまれるでしょうね」
淡々と話すジョシュア。言い返せなかった。
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