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隠匿の令嬢
第20章 アリエッタの愛



 やはりアリエッタ一人でザキファス邸に行かせるべきでなかった。


 公爵にはアリエッタに手出ししないよう釘を刺してはおいた。レオの庇護下にあるうちは、公爵は下手に手出ししないだろうと考えてはいたが……。


 いや、そもそも前提が間違っている。アリエッタは初めから邸を出るつもりでいたのだ。


 レオを守り、姿を消す算段をとっくにしていた。それを指し示すのはアリエッタが書き置いた手紙にある。


『アリエッタ・ベオグラード』と以前に偽名で使っていたファミリーネームで締め括られており、家を捨てる覚悟を彼女はしていた。


 どうすれば公爵を激昂させるかも知り尽くしていた彼女は、敢えてその手法を取ったのだ。





「申し訳ありません……」


「そんな……。殿下のせいでは」


「違うんです。そうじゃなく。アリエッタは私と王女の仲を誤解し、出て行ってしまったんです」


「え……? それはどういう……?」


 困惑を浮かべる夫人に、今度はレオが経緯のあらましを話し聞かせた。







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