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隠匿の令嬢
第20章 アリエッタの愛
「私は幼いあの子を見捨ててしまったの。あのときからなんです。アリエッタが私を頼らなくなったのは……」
夫人は身体を丸め、さめざめと泣きながら語る。
「アリエッタは主人から辛く当たられていていても、文句ひとつ言わず耐えていました。でも……初めてあの子は自分から私を頼ったんです。廊下で擦れ違う私のスカートを引っ張って……。
でもあのとき私は癇癪を起こすリリスを宥めに行く途中で……。言い訳になってしまいますが、私も疲れてしまっていたの。
だから……アリエッタの手を振りほどきリリスのところへ……。アリエッタがあのあと廊下で倒れていたと聞いて。熱が……高熱があって助けを求めてきたのに気付かないで……」
夫人はボロボロと流す涙は止めどない。
「呼んだ医者から聞いた話では、あと少し発見が遅れていたら危なかったって……。私が気付いていれば……。あの子の助けてのサインに気付いていれば……!
なのにあの子……目を醒ましたとき言うんです。私は大丈夫だからって。笑って言うんです……。リリスに付いててあげてって……!」
最後は悲鳴に近い嗚咽を夫人は洩らした。
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