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隠匿の令嬢
第20章 アリエッタの愛



 レオは夫人の話を聞きながら、嫌な動悸を感じていた。


 レオが出掛ける間際、アリエッタは裾を引っ張ったことがあった。糸屑が付いていた気がしたからと誤魔化したが、違ったのだ。


 ギリギリの状態にいたアリエッタが発した最初で最後の“助けてのサイン”。それをレオも見逃してしまっていた。


「すみ……ません」


 レオは膝に肘をつき、指を組んで額を乗せる。


 ──俺はどれだけアリエッタを傷付ければ気が済むんだ……!


 幸せにしたいと願った女性を己が最も煩悶させるだけでなく、古傷までも抉ってしまった。


 どこまでも募る後悔は際限なくレオを襲う。


 しかし立ち止まるわけにいかない。助けると決めたから。


「……夫人。私にもう一度だけチャンスをください。アリエッタを取り戻すチャンスを……っ」


「殿下……。ありがとうございます。私からもお願いします。あの子は殿下を必要としています。どうかあの子をよろしくお願いします」





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