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隠匿の令嬢
第21章 その世界、色鮮やかに
それでもやはり色は戻ってはこなかった。
盲目になってしまったわけではないので不便に感じることはないが、やはり物淋しい。
だが不思議なことに毎夜見る夢に出てくるレオはなにひとつ変わらず色鮮やかだ。
月色の髪も、琥珀の瞳も。彼が纏う鮮烈な色合いも。
ひとりで眠ることにも半年で馴れ、涙も枯れ果てたのに、起きるといつも泣いていた。
鮮明に思い出せる、レオと過ごした日々。
もう忘れなくてはと何度も言い聞かせはしてみても、深層に染み付いた彼への想いが忘れさせてくれない。
恋心を別の男性に馳せたまま神に仕えるとはなんと罪深いことかとも言い聞かせてはみた。
どんなに言い聞かせてみても忘れられるはずなどないのに。
アリエッタが礼拝の際に祈るのは、レオの幸せなのだから。
朝晩の礼拝も、そして昼に僅かな時間与えられている自由時間も礼拝堂に通っては一心に祈っている。
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