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隠匿の令嬢
第21章 その世界、色鮮やかに
「……俺には昔、大切な女性が二人いた。ひとりは乳母を務めてくれていたカーラ。もうひとりは妹のように可愛がっていたシンシアという少女だ」
レオはそう切り出して語る。
不幸な事故で亡くなったカーラと、病で亡くなったシンシアのことを。
淡々と語る口調に紛れ、深い哀しみがあった。
二人を知らないアリエッタでさえ、胸が詰まる思いになる。
さっきまで、どうしてここにいるのだとか、なぜ目の前に現れたのだとか。
せっかく恋心を忘れようとしていたのにだとか。
未練がましい気持ちになっていたのが、レオの話を聞き入るうちにどこかへ行ってしまう。
「──シンシアを亡くしてから俺は、哀しみに暮れていた。だがそんなとき、ある一枚の絵と出逢ったんだ」
アリエッタはふと思い出す。ギルデロイが話していたことを。
レオが心痛で伏せっていた折り、絵に癒されたのだと。
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