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隠匿の令嬢
第21章 その世界、色鮮やかに
「ある少女が祖父のために描いた肖像画だった。お世辞にも上手……とは言えない絵だったが、どうしてだかその絵を眺めていると、傷が癒えていく感覚になった」
レオは懐かしそうに眼を細める。
アリエッタもまた懐かしくなる。自分にも身に覚えがあるからだ。
祖父に肖像画を描いてくれと頼まれた。しかしアリエッタは断った。顔は描けないと、ザキファスの邸を長く離れるわけにいかないと。
けれど押し切られ、描くことになった。
初めて描いた肖像画は未熟で、思い出しても酷い有り様だった。
なのに祖父は大事そうに高価な額に絵を入れ、部屋に飾ってくれた。
家族に疎外されて育ってきたアリエッタを不憫に思い、優しかった祖父がアリエッタは大好きで。
その祖父を喜ばせられて、アリエッタも嬉しかった。
「だが俺を本当の意味で助けてくれたのは絵ではなく、それを描いた少女だった」
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