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隠匿の令嬢
第21章 その世界、色鮮やかに
レオの温もりがそこにある。それだけで胸が張り裂けそうに高鳴り、どこまでも幸福が広がっていく。
涙も止めようがなく、頬を伝う。
霞む視界で不思議なことが起こっていた。
流れる涙が世界を洗い流しているのか、灰色だった景色が上から下へと溶けるように流れ、見上げるレオの月色の髪も自分を愛おしそうに見詰める琥珀色の双眸も、彼を取り囲む様々な色彩も見えてくるではないか。
「アリエッタ、愛してる。二度と離さない。絶対だ」
「はい……はい。私も離れません」
告げた唇にレオのそれが重なる。
触れるだけのひどく優しい口付けだ。
でも、それでもじんわりと温もりに満たされていく。
「続きは帰ってからだな。……流石にここじゃまずいだろ」
言われてみてハッとなる。神聖な礼拝堂で、それも修道服を纏って。愛する人とはいえ抱き合うのはいけないことだ。
俯くアリエッタに反し、レオは聖体を見上げる。
「……今だけは神を信じてみてもいいと思う。なにしろアリエッタと引き合わせてくれたからな」
現金な物言いに、アリエッタはくすりと笑う。
アリエッタが心から笑えた瞬間だった。
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