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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る


 酷い……唇にはしないと言ったばかりなのに。


 そんな文句のひとつも言ってやりたいところだが、吐息ごと奪われた唇では呼吸すらままならない。


「あ……んふっ……」


 歯列の根元をなぞられ口蓋を舐め、淫靡な口づけは深くなるばかり。息を求めて唇を開くと、淫らな声が漏れてしまう。


 巧みな口づけに意識がぼうっとしていき、いけない、こんなのダメ……と駆り立てる罪の意識とは裏腹に、身体が蕩けそうなほど芯が熱くなり、なぜか下腹部がまた疼いた。


 舌先を軽く吸い上げられ、下唇を優しく食むとようやく離れる。


「くち……びるにはしないって……」


 浅い呼吸で弱々しく抗議する。


「ああ、言った。でもこれはペナルティーだ。もう忘れたのか?」


「ペナル……ティー?」


 思い返してみれば、敬語を使ったかもとも思うが、酩酊しかけている思考はうまく働いていない。


「じゃあ続きといこうか」


「続きって……もう終わったんじゃ?」


「なに言ってるんだ? あと14回残ってるだろう」


「か、回?」





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