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隠匿の令嬢
第4章 巣を追われた灰ネズミ
「もー、アリエッタってば変なところで頑固よね。大体明日はアリエッタの誕生日よ? 親友の私に祝わせてくれないの?」
「ニーナ……私……」
言いかけたところで静けさがにわかに騒がしくなる。
ニーナがゲッと顔を歪めた途端、アリエッタの腕を掴んで引っ張る。
理由はよく解らないが、こういうことが入学して以来よくあった。
「早く行こ! アリエッタ、もたもたしない!」
「う、うん」
そしてなぜかこのときのニーナはとても厳しい。まごついていれば叱咤の声が飛んでくる。
しかし遂にニーナの不可解な行動の訳が明らかになった。
「ニーナぁ! いたいた! 捕まえた」
ルンっと語尾につきそうな声にアリエッタは聞き覚えがあった。
ニーナとアリエッタは同時に振り返る。
アリエッタは眼を丸くし、ニーナは鬼の形相で。
「あ……アリエッタもいたのね。じゃあまたごきげんよう」
その人物はアリエッタを認めると口許をヒクつかせ、ワインレッドの束ねた髪をさらりと靡かせ翻る。
しかし逃げていたはずのニーナが彼女……もとい彼の襟をむんずと捕まえた。
「セドリック? 今アリエッタって言った? 二人がなーんで知り合いで、アリエッタを見て逃げようとしたのかしら?」
ニーナは満面の笑みで言うものの、新緑色の瞳はこれっぽっちも笑ってなかった。
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