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隠匿の令嬢
第4章 巣を追われた灰ネズミ



「その話ならきっぱりとお断りしたはずよ?」


「あら、あたしほど完璧な男はそうそういないわよ?」


「男? ハッ」


「まっ! 鼻で笑うなんて憎たらしい!」


「憎たらしくて結構。セドにどう思われようが……ってアリエッタ、大丈夫? 顔真っ青よ?」


 アリエッタをよそに言い合いを続けていたニーナが蒼白なアリエッタを覗きこむ。


「ええ、大丈夫。なんでもないわ」


「なんでもってこと……。セド! あんたなにかしたの!?」


「ええっ!? あたし? あたしが悪いの!?」


「あんたの男だか女だかわかんないところが気持ち悪いんじゃない!?」


「ひどーい!」


 セドリックは心底傷付いた顔をしたが、「そうなの?」と気遣わしげに聞いてくるものだから、アリエッタは違うの、と首を振った。


「じゃあどうしたの? 気分悪い?」


「ううん、本当に平気だから。ごめんなさい。それで……なんの話だったかしら?」


 心臓だけでなく胃がきゅうきゅうと縮みあがるが、心配をかけたくなくて無理矢理笑顔をつくった。





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