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隠匿の令嬢
第4章 巣を追われた灰ネズミ
「待って……え? レオって……」
聞いたそばからニーナが狼狽えだす。ニーナはレオとも知り合いなのだろうか?
そうであってもおかしくはない。なぜならセドリックと知り合いなら、話す機会だってあったはず。
ニーナは二年も前に入学しているし、社交界デビューも果たしてる。嫌々ながらもパーティーやサロンに出席していれば、貴族の令息に誘われることだってあっただろう。
「レオって……アリエッタはその人が誰か知ってるの?」
しかしどうも様子が変だ。ニーナも蒼白になりつつある。アリエッタは名前しかほとんど知らず、そう伝える。
ニーナはもう冷えてきた紅茶を一気に煽り、ふーっと長く息を吐いた。
「間違ってたら言ってちょうだい。アリエッタとセドの言うレオは……レオナルド・アッシュブラン王太子殿下のこと?」
「レオ……ナルド・アッシュブラン……?」
アリエッタは瞠目し、耳を疑った。
セドリックを見遣ると唇を結んで罰が悪そうにしている。どうやら聞き間違いではないようだ。
──レオナルド・アッシュブラン。
ラインハルト王国で育つ者なら一度は耳にしたことがある名。
アッシュブランはこの国の王族の名で、レオナルドは時期王を約束された王位継承権第1位を持つ人物の名だ。
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